5分でわかる、AWS Well-Architected Frameworkの要点(2)

2024.04.01
マルチクラウド 技術 AWS クラウド活用 コスト最適化 パフォーマンス改善
5分でわかる、AWS Well-Architected Frameworkの要点(2)

はじめに

皆さん、こんにちは。五味 なぎさです。AWS Well-Architected Frameworkについて解説する本ブログシリーズ。前回はフレームワークの概要と、フレームワークを構成する全6つの柱のうち2つ(運用上の優秀性の柱、セキュリティの柱)をお伝えしました。まだ、読まれていない方はぜひ、こちらからご覧ください。

さて今回は、残り4つの柱(信頼性の柱、パフォーマンス効率の柱、コスト最適化の柱、持続可能性の柱)についてお伝えしていきます。なお、本ブログでは詳細なベストプラクティスの内容にまでは踏み込んでいないため、興味がある方はそれぞれ記載の参考リンクから、各柱の詳細を見てみることをお勧めします。

前回ブログの範囲

  • (1)運用上の優秀性の柱
  • (2)セキュリティの柱

今回ブログの範囲

  • (3)信頼性の柱
  • (4)パフォーマンス効率の柱
  • (5)コスト最適化の柱
  • (6)持続可能性の柱

(3)信頼性の柱

この柱では、「意図した機能を期待どおりに正しく一貫して実行するワークロードの能力」を高めるための考え方と詳細なベストプラクティスが提供されています。設計原則としては以下の5つが挙げられます。

  1. 障害から自動的に復旧する
  2. 復旧手順をテストする
  3. 水平方向にスケールして集合的なワークロードの可用性を向上する
  4. キャパシティを勘に頼らない
  5. オートメーションで変更を管理する

ここでも、「回復性に関する責任共有モデル」に関する言及があり、前回のブログで紹介したセキュリティの柱と同じくAWSとユーザ側の責任分解点を意識する必要があります。

また、個人的に信頼性の柱の中でよく参考にするのは以下のページです。

上記には、要求される稼働率やRTO/RPOに応じた実装例や考え方が書かれています。設計時に実装範囲を定めないままだと、結果的にビジネス目標に対して過剰な可用性のシステムとなったり、逆にビジネス目標を満たさない実装となったりします。上記を参考に「どこまで実装するのか?」をきちんと定義することが重要です。

参考:信頼性の柱 - AWS Well-Architected フレームワーク - 信頼性の柱 (amazon.com)

(4)パフォーマンス効率の柱

この柱では、要件を満たすためのコンピューティングリソースの効率的な使い方、および需要の変化と技術の進化に合わせて効率性を維持する方法に焦点を当てて書かれています。設計原則としては以下の5点が挙げられます。

  1. 最新テクノロジーを誰もが利用できるようにする
  2. わずか数分でグローバル展開する
  3. サーバレスアーキテクチャを使用する
  4. より頻繁に実験する
  5. メカニカルシンパシーを重視する

オンプレミスの場合は、使用する最大スケールに合わせて予めリソースの購入・セットアップをしておく必要があります。一方でクラウドの場合は、必要な時に一時的にリソースをスケールアウトさせることや、サーバレスを利用することで、そもそもユーザ側でプラットフォームを意識せずに利用することが可能です。しかし、特に性能要求の高いシステムでは、本柱の内容をしっかり理解し、AWSでパフォーマンスメリットを最大限に享受するために考慮すべきポイントを押さえた最適化をすることが重要です。

参考:パフォーマンス効率の柱 - AWS Well-Architected フレームワーク - パフォーマンス効率の柱 (amazon.com)

(5)コスト最適化の柱

この柱では、「組織がコストを最小限に抑えて投資利益率を最大化すると同時に、ビジネス成果の達成につながるようなコストを意識したワークロードの構築および運用を支援」するためのベストプラクティスが提供されています。設計の原則としては以下の5つが挙げられています。

  1. クラウド財務管理を実装する
  2. 消費モデルを導入する
  3. 全体的な効率を測定する
  4. 差別化につながらない高負荷の作業に費用をかけるのをやめる
  5. 費用を分析し帰属関係を明らかにする

コスト最適化については、当社の過去ブログ「今日から始めるAWSのコスト最適化」シリーズでも解説しておりますので、よければ併せて参考にしてください。

参考:コスト最適化の柱 - AWS Well-Architected フレームワーク - コスト最適化の柱 (amazon.com)

(6)持続可能性の柱

この柱では、昨今注目を集めている「持続可能性」の実現を念頭に置いてクラウドアーキテクチャを設計するための、AWSの最新の推奨事項と戦略について書かれています。2021年12月に6本目の柱として追加されました。設計の原則としては以下の6点が挙げられています。

  1. 影響を理解する
  2. 持続可能性の目標を設定する
  3. 使用率を最大化する
  4. より効率的なハードウェアやソフトウェアの新製品を予測して採用する
  5. マネージドサービスを使用する
  6. クラウドワークロードのダウンストリームの影響を軽減する

また、この柱でも責任共有モデルが定義されており、ユーザ側で持続可能性を考える際に考慮する事項が挙げられています。システム設計から構築・運用に至るあらゆるフェーズにおいて、ユーザとベンダーの関係性がより密接になってきたからこそ、複数の柱において責任の所在を明確にすることが強く求められています。

持続可能性の責任共有モデル

持続可能性の責任共有モデル

出典:AWS Well Architected Framework内「責任共有モデル」(2024/3/26引用)

参考:持続可能性の柱 - AWS Well Architected フレームワーク - 持続可能性の柱 (amazon.com)

おわりに

いかがでしたでしょうか?以前お伝えした通り、AWS Well-Architected Frameworkはボリュームの多いドキュメントのため、各柱のポイントを押さえるだけでも気力が必要になります。今回のサマリーを通じて、今後のAWSにおけるアーキテクチャ設計の観点が少しでも広がり、皆様のAWS活用の参考になれば幸いです。また、AWSをはじめマルチクラウドに関するご相談はこちらからお気軽にお声がけください!今後もパブリッククラウドに関する情報を発信していきますのでよろしくお願いします。

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