電子署名の証拠力 | 電子契約

電子署名の証拠力 | 電子契約

日鉄ソリューションズ株式会社
斎木康二

監修 宮内・水町IT法律事務所 弁護士 宮内宏

電子署名の法的効力

日本企業では、押印や署名のない契約書や注文書は、ほとんど意味をもちません。それはいざ争いが生じて裁判になったとき、その契約書が証拠となるかどうかという点で、押印や署名の有無が決定的な力をもつからです。

では電子契約の場合どうでしょうか?電子署名の付与された電子ファイルの契約書が裁判の証拠になるのでしょうか?
結論からいうと、電子契約の場合、電子ファイルの契約書に適切な電子署名が付与されていれば、紙の契約書の押印と同様の法的効力をもっており、裁判の証拠となります。
今回は、この電子署名の証拠力について検討していきます。

電子署名は押印と同等の法的効力を持っているんだ。

押印のある書面の契約書が裁判の証拠となる理由

電子ファイルの契約書の証拠力について考えるにあたって、まず書面の契約書の証拠力について考えてみます。

契約書について、「存在するしない」・「内容が正しい、改ざんされている」といった争いが起きた場合、一般に契約書が存在すること、正しい内容であることを主張する側が、契約書を証拠として裁判所に提出し、契約の成立・内容の正当性を証明する必要があります。

ただし、裁判所に提出しさえすれば、どんな契約書でも証拠力を持つわけではなありません。民事訴訟法第228条第1項に「文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。」とあることから、「成立の真正性が証明された文書」である必要があります。

ここでいう「成立の真正性」とは、「作成者の意思を忠実に表現して作成されたものであること」を言います。つまり裁判所に契約書を証拠として提出するには、その契約書が作成者の意思を忠実に表現していることを証明しなければならないのです。これは並大抵のことではありません。

そこで、民事訴訟法は第228条第4項に「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。 」という条文をおき、「文書に本人の押印がある場合は、その文書は本人の意思を忠実に表現した文書だと推定される」としたのです。

これは「契約書が真正に成立したこと」を簡単に証明できるようにした点で非常に大きな意味をもつ条文です。契約書の存在を主張する側は、押印のある契約書を示すだけでよく、相手方がそれを覆す証拠をだして「真正に成立していないこと」を疑うにたる事実を示さない限り、その契約書が証拠として認められるのです。

この第228条第4項の存在により、「押印のある契約書」はいざという時に民事裁判の証拠として、相手が有効な反論をしない限り証拠になるわけです。
皆さんが、押印のある契約書を大切に保管しているのは、実はこの法律の存在が大きな理由なのですね。

ちなみに、この場合、本来契約の存在・正当性を主張する側が負うべき「証明責任」に変更はありませんが、「押印のある契約書」を証拠として示すことにより、契約書の存在・正当性を否定する側は有効な反論ができない限り、真正な成立が認められることになります。

「押印のある契約書」は、「真正な成立」が推定されるから証拠力があるのね。

電子署名の付与された電子ファイルの契約書が裁判の証拠となる理由

次に電子契約の場合をみてみます。
「電子署名の付与された電子ファイルの契約書」も「押印のある紙の契約書」とほぼ同じ法的なしくみが準備されています。
電子署名法第3条に「・・本人による電子署名・・がおこなわれているときは、真正に成立したものと推定する。」という、民事訴訟法第228条第4項とほぼ同様の効果をもつ法律がさだめられています。ですから押印のある書面の契約書と同様に、電子ファイルの契約書の存在・正当性を主張する側は本人の電子署名の付与された電子ファイルの契約書を証拠として提出するだけで、「真正に成立」した契約書と推定され、有力な反証を相手があげない限り電子署名の付与された電子契約書は証拠となります。

ただし、現在まで電子ファイルの契約書に関する電子署名の証拠力が直接争われた裁判はありません。判例のつみ重ねかさねがないので、電子署名の証拠力に対する判断はむずかしく、これから様々な議論がなされと思われますが、少なくとも「真正な成立」については、書面契約書の押印と電子署名は同等の効力をもつということができます。

電子署名法第3条によって、適切な電子署名がある電子ファイルには、押印のある文書と同等の法的効力が認められたんだ。

電子ファイルの契約書の証拠力

ここまで、電子署名の有無の視点から電子ファイルの契約書の証拠力について見てきました。ただし、証拠力を左右するのは、もちろん電子署名の有無だけではありません。

例えば、「電子署名を行う秘密鍵の管理方法」「電子証明書を発行する認証局の信頼性」の問題もありますし、電子署名以外にも「電子契約を行うシステムの信頼性、ログ」など証拠力に影響する要因はほかにもあります。

弊社では、この点で万全の配慮を行い、サービスを提供しております。疑問点などありましたらどうぞ弊社コンサルチームにご相談ください。

電子署名は大切な証拠になるけれど、それだけではないのね。秘密鍵の管理、認証局、ログなども重要なアイテムね。


電子契約導入のための20のヒント : 目次

1. 法令

1.1 電子帳簿保存法 : 電子契約で税務調査に対応できるのか?
1.2 電子帳簿保存法 : 電子契約と書面契約の混在に問題はないのか?
1.3 電子帳簿保存法 : スキャナ保存と電子契約
1.4 電子署名法 : 注文書や注文請書を本当に電子化して大丈夫か?
1.5 電子署名法 : 電子署名の証拠力
1.6 印紙税法 : 電子契約の場合、本当に印紙税を払わなくてよいのか?
1.7 下請法 : 下請法対応に関する注意点
1.8 建設業法 : 建設請負契約の電子化について

2. 技術

2.1 電子署名 : 電子署名・署名検証の作業イメージは?
2.2 電子署名 : 電子署名のしくみとはたらき
2.3 電子署名 : 電子証明書を選択する5つのチェックポイント
2.4 電子署名 : 長期署名について~10年を超える契約への対応~
2.5 タイムスタンプ : タイムスタンプの効果としくみ
2.6 EDI : 電子契約とEDIは何が違うのか?

3. 運用

3.1 導入目的 (ROI・購買プロセスの見える化) : 電子契約導入のためのROI算出方法
3.2 導入目的 (ROI・購買プロセスの見える化) : 電子契約による購買プロセスの見える化
3.3 機能 (契約書管理・カスタマイズ) : 電子契約の導入で契約書管理を劇的に改善
3.4 機能 (契約書管理・カスタマイズ) : 電子契約導入時に効果的なカスタマイズのご紹介
3.5 手順 (スモールスタート・取引先説明) : スモールスタートのすすめ
3.6 手順 (スモールスタート・取引先説明) : 取引先に参加してもらうにはどう説明すればいい?)

電子契約導入のための20のヒント
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