DataRobot導入事例「SBIホールディングス株式会社」~DataRobot導入後、データ分析組織はプロフィットセンターになった~

DataRobot導入事例「SBIホールディングス株式会社」~DataRobot導入後、データ分析組織はプロフィットセンターになった~

証券・銀行・保険など金融業全般において、インターネットを通じてより低価格で利便性の高いサービスを提供し続けるSBIグループ。また、金融サービス事業に留まらず、アセットマネジメント事業、さらにはバイオ関連事業に至るまで、多岐にわたる事業をグローバルに展開している同グループ全体の統括・運営を行っているのがSBIホールディングス株式会社(以下、SBI)だ。
古くからデータドリブンな文化を持つ同社は、2015年に国内各企業に先駆けてDataRobotの導入を決定したDataRobot古参ユーザーの1社。今回はその経緯や導入効果について、SBIの佐藤氏(社長室 ビッグデータ担当 次長)、高山氏(社長室 ビッグデータ担当マネージャー)に話を伺った。

聞き手

松木薗 哲哉
松木薗 哲哉(まつきぞの てつや)
日鉄ソリューションズ株式会社
金融ソリューション事業本部
営業本部 営業第二部
狩野 慎一郎
狩野 慎一郎(かのう しんいちろう)
日鉄ソリューションズ株式会社
ITインフラソリューション事業本部
営業本部 デジタルプラットフォーム営業部
デジタルイノベーション営業推進グループ

DataRobotを早くから高く評価。何度も協議の末に導入を決定

NSSOL 狩野

実はDataRobotが日本に上陸する前からその有用性に着目されていたというSBI様。まずは導入の背景や課題などについて教えてください。

佐藤氏
佐藤 市雄(さとう いちお)氏
SBIホールディングス株式会社
社長室 ビッグデータ担当
次長
SBI 佐藤

私がビッグデータの重要性に着目し、データに基づいた意思決定をグループ内で推進していきたいと考えてこの部署を立ち上げたのが2012年でした。ですが、立ち上げ数年は勉強や市場調査、データ収集、統計的手法を用いた分析といった地道な業務だけで手一杯で、社内にデータサイエンティストがおらず、採用も難しいという状況が続いていました。なんとか採用できても簡単には人材を増やせないという中で出会ったのがDataRobotでした。当時は日本法人も無く販売方法すら決まっていない状況でしたが、何度もミーティングをさせていただき、2017年にようやく導入となりました。
今でこそAutoML(Automated machine learning)のデファクトスタンダードとなったDataRobotですが、当時はAutoMLといったジャンルが存在していませんでしたから、社内で稟議を通そうとしてもまず「何のツールだ?」と(笑)。説明はするものの比較すべき競合製品もまったく無いという状況で、大変苦労した覚えがあります。最後は製品に価値を見出していた私が社内を押し切りました。

NSSOL 狩野

まさに先見の明をお持ちだったが故のご苦労ですね。SBI様は顧客行動分析に関する研究を進められているなど、マーケティング領域でのAI活用に力を入れていると伺っています。DataRobotの活用テーマもこの領域でしょうか。

高山氏
高山 寛史(たかやま ひろふみ)氏
SBIホールディングス株式会社
社長室 ビッグデータ担当
マネージャー

予測の理由を説明してくれるDataRobotは、現場とのコミュニケーションツールになる

SBI 高山

そうですね。私が長らく携わっているテーマの一つがSBI損害保険株式会社(以下「SBI損保」)の契約更新案内のフォロー対象者を探索する分析です。どういった契約者様が更新案内を必要としているのかをスコアで予測し、実際のカスタマーリテンション施策に役立てています。DataRobotを使って助かっているのが、ある程度のデータの整備を行えば、あとは自動的にモデリングまで行ってくれる点。Rやpythonによるモデルの開発経験がなくても作れるということは非常に便利です。
一方、完成したモデルをそのまま活用して良いかどうかの評価や判断には、ある程度の統計や現場のドメイン知識に加え現場とのコミュニケーションが必要になります。DataRobot上のグラフや様々なチャート(特徴量のインパクトなどのグレーボックス機能)を活用して説明することで、現場担当者のモデルに対する理解を深めることができました。DataRobotは現場とデータサイエンティストとのコミュニケーションツールとしても活用しています。予測の理由を非常に明確かつ数学的に表現してくれるので、現場担当者とデータサイエンティストが同じ画面を見ながらモデルを評価できます。

SBI 佐藤

これはSBI損保に限ったことではありませんが、我々はグループ横断的に配置しているビッグデータ担当者や各事業会社の各プロジェクト担当者と直接やり取りをしています。事業会社には必ずしも分析専門の担当者がいるわけではありませんが、DataRobotを活用することで担当者もモデルの解釈や精度の確認、予測の仕組みの理解などにつながったというのが大きいです。機械学習技術等を用いた分析プロジェクトも初めは1つ2つでしたが、数をこなしていくうちに加速度的に理解が進み、現在では同時に38ものプロジェクトが回るようになっています。AIプロジェクトの経験値がグループ全体で積みあがっているのです。

定期的な機械学習・深層学習分科会からAIテーマを創出する

NSSOL 松木薗

今現在、多くの企業はAIテーマを出すのに苦労をされていると思います。貴社の場合、どのようにテーマを創出されているのでしょうか。

SBI 佐藤

数年前からグループ全体の機械学習やAI関連技術の知識の底上げ施策を継続して実施しています。具体的には定期的な勉強会と、各現場のニーズの把握です。当初は、そもそもAIとは何か、教師あり/なしや回帰分類、クラスタリング、そしてディープラーニング、少し離れてプライバシー保護技術や量子コンピューティング等、出席者が飽きないように毎回テーマを変えるなど趣向を凝らしました。この勉強会では、現場が抱えている課題、そこから考えられるテーマはあるか、どんな業務で使えそうか、などアンケートを必ず取るようにしていました。そこから出てきたテーマを事業会社とホールディングス共同で育てていくという流れです。

NSSOL 狩野

素晴らしいテーマ創出手法ですね。実は弊社としてもその方法でご支援をさせていただいただくケースが増えており、まさに王道のパターンではないかと思います。実際に実務にどのように適用したのか、というところも気になります。実際にDataRobotで予測した結果を施策に結び付けられるかどうかは、現場にラストワンマイルがありますよね。

SBI 高山

現在では予測の結果を元に施策に結びつける業務フローを確立していますが、やはり初めは試行錯誤の連続でした。事業会社の担当者も、科学的なアプローチや検証方法には慣れていません。とりあえずやってみた、その結果をまとめる、去年やったから今年もやろう、どうしてもそういう形に陥りがちです。そうではなくて、予測の結果をどのように活用するのが良いかという実験を科学的に行うための形を現場と一緒に積み上げます。運用に沿って複数のモデルを作成し、スコアを色々なパターンで区切って、実際に検証してみて、効果を確認しました。現在はスコアの結果から架電対象者のリストをまとめ、損保のコールセンターに毎月送っています。

SBI 佐藤

現場担当者とも、月一回、多い時だと二週間に一回位のペースで密にやり取りして、実験方法や予測結果の検証方法を話し合って理解してもらって、というプロセス経てやっと今の形を確立できました。

DataRobotの費用対効果は数億円規模

NSSOL 狩野

DataRobotの費用対効果についてはいかがでしょうか。冒頭、佐藤さんが稟議を通された時は、工数が何人月減るから、という効果をうたうわけでもなく力業でOKをもらったと伺いましたが。

SBI 佐藤

そうですね。私がグループ横断でのデータ活用推進組織の設立を提案し、社長直下にビッグデータ専門組織を構築したのが2012年。当初数年間はずっと先行投資が続き、DataRobotもその流れの中で導入しました。2017年頃、ようやくマーケティング領域で成果が表れ始め、2018年頃からはコストセンターではなくプロフィットセンターになってきた実感を持ちました。現在ではプロジェクト単位で収益を見える化できており、何億円という規模で売上増・コスト削減できています。実際のところ、分析組織として収益の見える化ができないと要員の確保や維持ができませんし、増やし続けることもできません。データやツールなどインフラ面も整えていくことができませんから、メンバーには費用対効果をかなり厳しく言っています。データサイエンティストとしての目標にも必ず金額を書かせています。

NSSOL 狩野

ありがとうございます。DataRobotを導入されたことの、対外的な評判みたいなところはいかがでしょうか。役員層や他部門、あとは佐藤さんが色々なところで講演されていると思いますが、その反応などはいかがですか。

SBI 高山

実は「SBIさんは国内でも5本の指に入るDataRobotパワーユーザーです」とDataRobot社から言われたことがあります(笑)。今も新しいメンバーがどんどん入ってきていますが、彼らもどんどんDataRobotを使っていこうとしています。

SBI 佐藤

お陰様で現在では中途採用の応募も多いのですが、面接の際に、DataRobotを導入済みで、使いこなしている点は喜ばれることがありますね。「一度使ってみたかったです」というような場面もあります。DataRobotの費用対効果として人材採用への貢献を入れてもよいかもしれません。また「SBIHDのこんな取り組みに共感しました」や「僕(佐藤氏)の講演に感銘を受けた」という話が面接者から出ると、同席した人事部長にSBIのAI活用の取り組みはここまで認知されてきたのか!と驚かれたこともあります。

社長直下組織だから事業会社のAI活用・データ活用を推進できる

NSSOL 狩野

組織のところお話を聞かせてください。社長室・ビッグデータ担当という位置づけ、社長室直下であることのメリットや、事業会社との業務分担、役割分担など、縦割り組織による苦労もあるかと思いますが、それを打破するためのポイントや普段気を付けていることがあれば教えていただけますか。

SBI 佐藤

まさに社長直下であるところが、データ活用だったりAI活用だったりというところで非常に重要です。結局、データは分析して楽しいオモチャではなく、そこに意思決定が無ければ何の効果も生まれません。意思決定に一番近いところにデータがあり、分析組織があるというのは、意思決定に繋げるという部分で効果があります。

あとは事業会社との役割分担。実際のデータを持っているのは業務が存在する現場の事業会社であって、分析結果を使うのも最終的にはその事業会社です。トップダウンで分析結果を使ってもらうには、分析組織が社長直下にある方がいいんです。どこかの組織にところ属しているわけではないので、グループ全体のため、グループの収益のため、という推進がしやすいのです。

SBIグループ内でもAI民主化のニーズが強くなっている

NSSOL 松木薗

進んでいる会社のお取り組みをお聞かせ頂けるのは面白いですね。
今後の活用について、というところですが、弊社のお客様を見ていると、現場の方にDataRobotをつかってもらう、民主化の動きが増えてきています。御社では今後どのように利用を進められるのでしょうか。

SBI 佐藤

基本方針として、市民データサイエンティスト育成というのは大きなテーマの一つとして推進しています。AIサクセスプランの立案を中心に、AIの運用までを現場でできるようにするために、教育にも非常に力を入れています。活用の方向性は既にある程度見えていますので、このまま順調に進めば来年以降大きく実を結んでいくものと考えています。

SBI 高山

データサイエンスの大まかな流れを理解したいという現場ニーズも非常に強いです。グループ全体の中から市民データサイエンティストを輩出するためにデータサイエンス勉強会を企画し、各テーマに沿って学習のサポートをしています。

NSSOLにはDataRobot導入事例の情報提供に期待

NSSOL 狩野

AI民主化の取り組みを進める上で、NSSOLに期待することがあればぜひ教えていただけないでしょうか。

SBI 佐藤

NSSOLさんは事業モデル変革「NSSOL4.0」の中で「価値共創」を主軸に置かれていると聞いていますが、やはり他社事例の収集でご支援いただきたいですね。他のDataRobotユーザーさんをご紹介いただいて、積極的に情報交換を行っていきたいです。今はコロナで中断していますが、そろそろコミュニティ活動も再開しようという話もでてきていますので、DataRobotに関係するコミュニティ活動をサポートしていただきたいと考えています。

SBI 高山

営業の松木薗さんには、DataRobotという枠組みとは違うレイヤー、我々SBIグループ全体のデータ活用を幅広く柔軟に対応していただいていると思っています。例えばBIツールの提案であったり、既存ベンダーとのやり取りなど煩雑なところを進んで巻き取っていただいたりとか、あとは金融におけるソリューション情報提供を定期的に行って下さったりとか、DataRobotにとどまらない、幅広い領域をところ柔軟に素早く対応していただいているところが非常に助かっており、これからも是非お願いしたいです。

NSSOL 松木薗

引き続きデータ分析領域を是非弊社と一緒に力を合わせてやらせていただきたいと考えています。更にはSBIのシンボルマークであるアーチのように、各関連会社様も、関連会社以外の銀行様も含めて大きな取り組みをしていこうとしている中に、NSSOLも付いていって、僕らができることを色々提案していきたいなと思っています。引き続き宜しくお願い致します。

SBIホールディングス株式会社
SBIホールディングス株式会社
本 社:
東京都港区六本木一丁目6番1号
設 立:
1999年7月8日
資本金:
92,018百万円(2020年3月31日現在)
従業員数:
連結 8,003名/単体 227名(2020年3月31日現在)
※DataRobotはDataRobot, Inc.の登録商標です。
※記事内容は掲載当時のものとなっております。
DataRobotに関するお問い合わせ