2025年6月9日〜6月12日にサンフランシスコのモスコーン・センターで開催されたDatabricks Data + AI Summit 2025に参加してきました。本カンファレンスは「Data Intelligence Platform」をテーマに開催され、200社以上の展示企業と約23,000名が参加しており、生成AI業界の最新トレンドを体感することができました。
初めまして、ITサービス&エンジニアリング事業本部 デジタルプラットフォーム事業部デジタルプラットフォームソリューション部の新地です。海外のスタートアップ企業リサーチを担当しています。入社以降デジタルワークプレース分野に携わっており、特に生成AI領域やIT運用管理領域において経験を積んできました。この度、現地時間2025年6月9日〜6月12日にサンフランシスコのモスコーン・センターで開催されたDatabricks Data + AI Summit 2025(以下、DAIS)に参加してきました。このカンファレンスは「Data Intelligence Platform」をテーマに、200社以上の展示企業と約23,000名が参加する世界最大級のAI/ML(機械学習)領域のビジネスカンファレンスです。NSSOLからはUS駐在員を含め、12名の社員が参加してきました。生成AI業界の最前線の動向をキャッチアップする貴重な機会となりましたので、このブログを通じて、私がDAISで得た最新情報を共有したいと思います。
まず、DAISの概略について簡単にお伝えいたします。DAISは、データ+AIの活用プラットフォームを提供するDatabricks社が主催する年次イベントです。AI/ML領域では最大規模のビジネスカンファレンスで、例年6月上旬に開催されています。基調講演(Keynote)と展示会(Expo)で主に構成されており、Databricks社製品の最新情報に加えて、業界のリーダーやAI/ML領域のベンダーが登壇し、AI/ML領域の最新動向や今後の展望についてセッションを行います。ご想像の通り生成AI領域に関しての注目度が最も高く、関連するセッションや展示が多く開催されていました。DAISは毎年カンファレンスのテーマがあるのですが、2025年のテーマは「Data Intelligence Platform」で、企業や業界の発展に様々な方面からAIやMLを積極的に活用していこうというメッセージが込められています。
NSSOLはSIerとしての豊富なデータ基盤構築経験とデータ分析のユースケース実装知見を基に、Databricksを使ったデータ+AIプラットフォームの実現を支援しています。Databricks社からInnovation Partner of the year 2024 for Japanを受賞した実績を持ち、Databricks社が提供するソリューションを用いてAI利活用のケイパビリティを強化しています。
Keynoteでは、データとAIの活用を中心に、新機能や技術の進化について幅広く紹介されました。特に注目度が高かったのは、データ処理やAIアプリケーション開発をより簡素化し、効率化するための新機能の発表です。新機能について5つピックアップしてご紹介します。
従来はトランザクション処理基盤と分析基盤を分けて運用していたため、同期やコスト面が課題となっていました。Lakebaseを使うことで、トランザクションデータと分析データを1つの基盤で扱えるようになります。そうすることで、同期やコスト面の課題を解決するとともにAI Agentがリアルタイムに最新データを利用できるようになります。
Databricks Appsは、Databricks環境上で直接アプリ構築ができるものです。これまでだとアプリ開発の度にインフラ構築やセキュリティ対応に時間を要していましたが、こちらを使うことで開発スピードと安全性を両立できるようになります。
これまで手がかかっていた生成AIエージェントの開発・デプロイ・運用を簡素化するフレームワークとして登場し、ノーコードローコードのタスク定義やHuman In the Loopによるエージェント評価機能などを提供します。
従来はデータ分析に専門知識が必要とされていましたが、自然言語で問合せをするだけでデータ分析された数値やグラフをすぐに返してくれます。
これまではモデル管理中心で、生成AI Agentの挙動や品質を統括的に把握、改善することができませんでした。ML flow3.0によって、AI Agentの統括的な管理が可能になり、容易にエージェントの継続的改善ができるようになりました。
Databricksは、これらの技術を通じて、AI時代のデータ活用をより身近で強力なものとすることを目指しています。データとAIを組み合わせたアプリケーションの開発を加速し、ビジネスの効率化や新たな価値創造を支えていくことが期待されます。
今回のDAISは、例年に増して活気に満ちたイベントとなり、会場は終始熱気に包まれていました。その背景には、Databricksがシリコンバレーの最新技術トレンドをいち早く取り入れ、市場の高い期待に応えるプロダクトや機能を次々と打ち出していることがあります。DAIS 2025の中で一番印象的だったのが「自然言語UIの急速な進化」です。これにより、非エンジニア層でもSQLやコードを書くことなくデータにアクセス・操作できる環境が整いつつあります。Databricksの目指すデータエンジニアリング業務の民主化が現実のものとなりつつあります。また、現在主流の対話型AIの次の段階である自律型AI(Agentic AI)の分野でも関心が高く、多くのユーザ企業が具体的なユースケースを模索する姿が見られました。意思決定支援や自動化業務への応用など、試行段階を超えた活用例も一部で紹介されており、実利用フェーズに入った企業の取り組みが参加者の関心を集めていました。今後Agentic AIの実用化が進むことで、定型業務の自動化がさらに加速すると考えられます。これにより、企業は限られた人材のリソースをより創造性や専門性が必要な活動に割くことが出来るようになるでしょう。
私たちは現在、生成AIを活用したユーザ自己解決型サービスデスクのローンチに向けて活動しています。この取り組みは、生成AI技術の活用を通じて、これまでのサービス業務のあり方を根本的に変革することを目的としています。生成AIは、自然言語処理や機械学習を駆使して、ユーザからの問合せに対して、迅速かつ正確な回答を行います。これにより、サポートスタッフの手を介することなくユーザ自身が問題を自己解決することができます。まさに、前段でご紹介したAgentic AIの実用化による定型業務の自動化です。
私たちが特に注目しているのは、生成AIの中でもAIチャットボットやAIアシスタントの領域です。これらのツールは、企業内のIT、HR、総務などのサポート業務を自動化し、ユーザの問合せに即座に対応することで、業務効率を向上させます。
サービスデスクの自動化の仕組みを強化するには、RAG(検索エンジン+LLM)やLLMの役割が欠かせません。
まず、RAGのプロセスですが、このシステムでは、ユーザが問い合わせを入力すると、社内資料から回答を検索し、検索結果から回答文を生成します。検索エンジンがポータルサイト、ファイルサーバ、クラウドストレージから情報をクロールしてインデックスを作成し、LLMが検索結果をもとに回答を生成します。次に、LLMのファインチューニングについてです。再学習のプロセスを通じて、SLMを作成し、学習済みのSLMがユーザの問い合わせに対応する仕組みとなっています。このプロセスでは、GPUを使用して再学習を行い、より精度の高い回答を提供することを目指します。ユーザからの問い合わせに対して、学習済みのSLMが迅速に回答を生成することで、業務効率を向上させることができます。
DAIS2025では、高度なRAGやLLMを用いた社内向けAIアシスタントの展示に足を運び、未来のサービスデスクの姿を垣間見ることができました。私たちはいち早く最新のサービスデスクをご提供するために、引き続き評価検証を進めていく所存です。さらに、生成AIを活用したサービスデスクのローンチに向けては、AIの倫理的利用やセキュリティ対策にも注意を払う必要があります。Chatbotに対して、機密情報を聞き出したり動作しないようにしたりするなどの悪意のある質問を事前に予測し防止するといった技術も発表されており、今後の導入を検討していく必要があると感じました。
DAIS2025は、「技術者だけではない全てのユーザがAIを使用し業務の発展を推進していく」という強い姿勢が表れていたと感じています。また、生成AIの活用が不可欠となるなかで、今後もさらなる発展が目指されており、楽しみに感じました。
DAIS2025で特に感じたのは、「生成AIを業務に積極的に活用することが、今や企業成長のために不可欠な時代になっている」ということです。多くの企業がAIを活用した業務推進を当然の取り組みとして捉えており、AI活用は競争強化の重要なポイントとなっています。しかしながら、セッションに参加する中で、現時点では業界ごとに生成AIの活用方法やスタンスに違いがあることも印象的でした。例えば、金融業では「あくまでも意思決定は人間だ」という考え方から、生成AIの使用は対個人顧客の接客など一部業務の補助に限られていました。それに対し、運輸業や製造業では社内の重要な意思決定にも生成AIを積極的に活用するなど、より前向きな姿勢が見られました。このように、業界によって生成AIの使い方や姿勢が異なるものの、生成AIが企業の成長と業務効率化に寄与する存在として広く認識されていることが、DAIS2025を通じて改めて明らかになりました。
DAIS2025で得た知見も踏まえ、NSSOLでは今後の生成AI戦略を日々検討しており、2025年度中に生成AIを用いたユーザ自己解決型ヘルプデスクサービスのローンチを予定しております。本サービスにAIをはじめとする最新アーキテクチャを適用するため、現在市場分析・検証などを実施しております。最新アーキテクチャの組み込みを積極的に進め、競合他社との競争力を高めて、お客様に高品質なサービスを提供していきます。今後もブログを通じて、最新の生成AI動向や技術についての情報を引き続き発信していきますので、ぜひご期待ください。次回は、BlackHat2025のレポートを紹介予定ですので、お楽しみに!