まる見え!パブリッククラウド移行(2):AWS移行ステップと役立つサービス

2024.09.27
マルチクラウド 基礎 AWS クラウド活用
まる見え!パブリッククラウド移行(2):AWS移行ステップと役立つサービス

はじめに

皆さん、こんにちは。五味 なぎさです。パブクラ移行をテーマにしている本シリーズ、前回は米国メガクラウド4社のサービス比較をしながら移行の基礎を解説しました。まだ前回のブログを読まれていない方はぜひ、こちらをご覧ください。

さて今回は、利用クラウドを選定した後、どのように移行を進めていけばよいかについて整理していきます。日本でも幅広いシェアを持つAWSを例にして解説していきますので、これを機に、ご自身の認識に抜け漏れがないか等、改めて確認してみてください。

クラウド移行の進め方

ではまず、AWSに限らずクラウド移行全体の流れについておさらいです。多くの場合は、次のようなステップを踏むことになるでしょう。

1. 移行目的を明確にする

クラウド移行はあくまで「手段」です。運用負荷軽減、システムの安定性・アジリティ向上等、何が移行目的なのかを初めに明確化し、関係者で合意形成することが非常に重要です。

2. 現状を分析・把握する

現行システムの構成情報や、稼働システムの一覧、性能情報等を洗い出し、分析します。
範囲が複数システムに渡る場合や共通基盤等、対象インフラ上に複数のシステムが載っている場合、構成情報が管理されていないシステムがある、管理組織が分かれている等、現状の分析・把握に時間を要することもあります。そのため、本ステップをどのように進めていくかの詳細な計画を立てることや、関連部署との早期連携が重要です。

3. 移行によるTCO評価等、移行の効果を評価する

一般的にクラウド移行によってTCO(総保有コスト)は下がると言われますが、自社の場合はどうなのかを事前に検討しておくべきです。1で定めた移行目的と照らし合わせながら、目的に対して効果がある施策なのかを評価します。
評価の際、インフラコストだけを比較してしまう場合がありますが、トータルの効果を考えることが重要です。例えばマネージドサービスを利用することで維持・運用コストが下がる、アジリティが向上することで本業の業績向上が望める等です。また、インフラコストも、オンプレミスであれば数年後を見据えたサイジングが必要ですが、クラウドの場合はシステム規模の拡大に合わせて徐々に利用リソースを増やすことができますので、そういった点も考慮した比較が必要です。

4. 移行方法を検討する

現状分析の結果や達成したい目的を踏まえ、どのような移行方法(Rehost、Replatform、Refactor等)を採用するか検討します。各移行方法については前回ブログで解説しているのでそちらをご確認ください。
移行方法の選択によって効果やコストが変わってくるため、3と並行で検討されることが多いです。

5. 移行後のシステム構成を検討する

2~4の内容を踏まえ、アーキテクチャ全体の構成を検討します。
具体的に利用するサービス、サービス間の連携方式、外部システムとの連携インタフェース等を検討します。また、運用に必要なシステム構成についても合わせて検討が必要です。

6. 具体的な移行計画・移行手段を策定する

現行システムを5で決めた構成に移行するための計画を立てます。ヒト、モノ、カネの調整や、どのような手段で移行するか(一括移行/分割移行、移行ネットワーク経路、ツール等)を検討します。
閉域の回線をオンプレミス、AWS間で敷設する場合等、環境準備にリードタイムがかかる手段もあるため、単純な移行作業にかかる時間だけでなく、移行のための環境準備にかかる時間も含めて計画を立てる必要があります。

7. システムの受け入れ体制を整備する(ガイドライン策定・運用等)

クラウド利用の効果をより得るためには、クラウドでシステムを作るだけでなく、利用方法や運用のクラウド適正化が必要です。
そのため、本ステップで移行後のシステム運用方法や、クラウドの利用ガイドライン、利用者の教育等、クラウド移行後に必要となる仕組み・体制を整備します。特に複数システム・複数組織が利用するような共通基盤の場合、最初に本プロセスを経ないと後から対応するのは中々骨が折れる作業になりますので、導入前の検討が重要です。

8. システムを構築する

5~7の内容を考慮しながら、システムを構築します。

9. 移行作業をする

6の計画に基づいて、8で構築したシステムへ移行します。

そしてAWSでは、このクラウド移行のステップを大きく以下の3つに分類・定義しています。

  • Access(評価)
  • Mobilize(移行準備)
  • Migrate&Modernize(移行&モダナイズ)
引用:AWS-Black-Belt_2023_Migration-7R_1208_v1.pdf (awscloud.com)
引用:AWS-Black-Belt_2023_Migration-7R_1208_v1.pdf (awscloud.com)

つまり、冒頭でご紹介したクラウド移行全体の流れをAWSの定義に当てはめると、次のように整理することができます。

  • 2~4:Access(評価)
  • 5~7:Mobilize(移行準備)
  • 8,9およびその後の最適化やモダナイズ対応:Migrate&Modernize(移行&モダナイズ)

移行に役立つAWSのサービス・ツール

さて、前述した各移行ステップを進める上で、AWSから様々な役立つサービス・ツールが提供されています。多様なサービス情報を都度確認するのは手間ですよね?ここでは、その中でも特に覚えておいていただきたい代表的なサービス・ツールを一挙に紹介していきます。

Access(評価)ステップで役立つサービス・ツール

Mobilize(移行準備)ステップで役立つサービス・ツール

Migrate&Modernize(移行&モダナイズ)ステップで役立つサービス・ツール

(参考)

おわりに

いかがでしたでしょうか?今回はAWSに焦点を当てて、実際の移行ステップを解説してきました。次回は本文中でご紹介した「Migrate&Modernize(移行&モダナイズ)ステップ」で活用できるツールについて、さらに具体的な利用手順や注意点に触れていく予定です。

なお、当社ではAWS包括的技術支援サービスを提供しています。AWSへの移行でお悩み等ございましたら、ぜひ本サービスもご活用ください。その他、AWSをはじめマルチクラウド化に関するご相談全般はこちらからお気軽にお声がけください!それでは、また次回もお楽しみにお待ちください!

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