皆さん、こんにちは。ITサービス&エンジニアリング事業本部(以下、ITS&E)クラウドプラットフォーム事業部の五味 なぎさです。私の所属部署では、クラウドサービス事業の拡大をミッションとしており、当社が提供するマネージドクラウドサービスabsonne(アブソンヌ)の企画・運営・提案・導入や、Amazon Web Services(以下、AWS)、Microsoft Azure(以下、Azure)、Google Cloud、Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)等のパブリッククラウドサービスを利用したシステムの提案・設計・導入を推進しています。
そうした事業部のミッションを背負い、今年もクラウド市場の最新動向の把握と、今後弊社で取り扱う可能性のあるサービスに関する情報収集を目的として、AWS re:Invent2024へ参加してきました。当社からは、7組織から計15名が参加し、現地での情報収集や交流に励みましたので、イベント内容と現地の様子について本ブログでレポートします。
なお、昨年の様子はこちらのブログで紹介しているので、ご興味あればぜひ併せてご確認ください。
今年で13回目となるAWS re:Inventは、AWSが主催する世界最大規模の学習型カンファレンスです。2024年は12月2日から6日までラスベガスで開催されました。世界各国から約6万人が集まり、日本からも約2,000人が参加しました。イベントでは2,000を超えるセッションが用意され、期間中に100以上のアップデートが発表されました。
re:Inventで最も注目を集めるのが基調講演です。新サービスや大型アップデートの発表、AWSのビジネスに対する考え方など、最新のAWSを知ることができます。今年は5つの基調講演が実施されましたが、今回は特に技術領域問わず幅広く皆さんにお知らせしたい3つについて紹介していきます。
AWS Utility ComputingのSenior Vice PresidentであるPeter DeSantis氏が、AWSを支えるハードウェア、インフラについて語りました。前半はインフラ全体に関わるこれまでの取り組みについて、後半はAIサーバーTrainium2の開発秘話や数千台のサーバーを10マイクロ秒未満のレイテンシーで接続する10p10u(テン・ピー・テン・ユー)ネットワークの実現方法など、生成AIを支えるAWSの取り組みについて詳細に説明がありました。AWSはカスタムシリコンの設計に投資するなど、古くよりハードウェアレベルからの最適化に取り組んでおり、その過程で得た知見や実績が生成AIの取り組みの中でも活かされていることを感じました。また講演には、AIシステムの開発・展開においてAWSと協業するAnthropicの共同創業者でありChief Compute OfficerのTom Brown氏も登場しました。Anthropic社の提供する生成AIの大規模言語モデルClaudeをより高速に実行できる環境をAWSとの協業により実現した話やその実現にはカーネルレベルでのパフォーマンス最適化が可能なTrainiumが必要だった話などがありまた、最後には2社が協業して取り組む生成AIのプロジェクトProject Rainierについても触れられ、今後の期待が高まる内容でした。
AWSのCEOであるMatt Garman氏によって、多くの新サービス、新機能が発表された特に注目度の高い基調講演でした。①分析ワークロードに最適化されたストレージであるAmazon S3 Tables、②事実上無制限のスケールと最高の可用性を備えた分散サーバレスデータベースAmazon Aurora DSQL、③生成AIサービスであるAmazon Bedrock/Amazon Qへの多数の機能追加などが発表され、会場が沸き立ちました。また、Amazon CEOであるAndy Jassy氏も登壇し、生成AIの基盤モデル「Amazon Nova」も発表されました。「Amazon Nova」は非常に高速で、マルチモーダルモデルや画像/動画に特化したモデルもあり、更には他のモデルよりも75%コスト効率が高いとのことですので、今後の基盤モデルの選択肢としてかなり有力なものになり得るのではないかと思いました。
AWSの立上げ時代からサービスの技術の根幹を支え続けているDr. Werner氏(現AmazonのCTO)の基調講演は、AWSの技術や文化の深い話を聞くことができることに加えて、講演の演出もとても魅せられる内容となっており、私は毎年楽しみにしています。今年は「Simplexity」(「Simpe」+「Complexity」を組み合わせた造語)をテーマに、複雑性への対峙方法や、アーキテクチャの細分化、自動化への取り組み、最適なチームの規模、など、AWSの経験に基づく6つの教訓についての話がありました。また、Matt Garman氏の講演の延長としてAmazon Aurora DSQLの仕組みについての言及もあり、大変興味深い内容でした。
これらの基調講演を通じて改めて感じたことは、AWSはCustomer Obsessionに基づきお客様を起点に物事を考えるなど、軸となる考え方をぶらさず革新的な取り組みが行えているという点です。基調講演の中ではAWSのユーザ企業の方の発表やAWS(Amazon)の文化に関わる話もあり、技術面以外でも考えさせられる内容でした。また、技術面で言うと昨年以上に生成AI色が強くなっており、その進化についていく必要性を感じました。
基調講演の他にも数多くの個別セッションが開催されています。その魅力は何と言っても種類の多さと体験できる工夫です。私は主に、GameDayやWorkshopといったハンズオン系、および、新サービス(EVS、Amazon Q VMwareワークロードのEC2移行支援など)系のセッションを中心に参加しました。参加したセッション内容のうちいくつかの内容を紹介します。
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Amazon Bedrockを利用する生成AIアプリケーションに対するセキュリティ対策を行うハンズオンでした。生成AIは便利な一方、企業等で利用する場合セキュリティの対策が重要になるため、本ハンズオンで実践的に実装方法を学ぶことができ、良い経験になりました。私自身の生成AIの知見は自己学習で得ているレベルでしたが、講師の方の支援なども一部受けながら、AWS機能を利用したセキュリティ対策の実装を完遂することができました。AWSではAmazon Bedrock Guardrailsなど、サービス内にセキュリティのガードレール機能が搭載されており、それによりかなり実装ハードルが下がると実感しました。
GameDayとは、4人1チームでAWSコンソールを操作しながら課題を解決するゲーム形式のハンズオンセッションです。詳細は非公開のため残念ながらお伝えできませんが、本セッションはNew Relic社がスポンサーだったため、一部New Relicのコンソール操作を体験することができました。提示された課題解決に向けて、私はチームの中でNew Relic周りの設定と、EKSやコンテナ周りの課題を担当しました。日頃業務で触れている技術を活かして担当範囲の課題をクリアすることができ、実力試しとしては良い経験でした。また、チームメンバーはこの場で初めて出会った方ばかりでしたが、GameDay終了後に一緒にランチを取るなど、交流面でも良い経験となりました。
今回のre:Inventで発表された、Amazon Q DeveloperのVMwareからAWS(EC2ベースのワークロード)への移行支援機能に関するセッションでした。該当機能の開発背景と機能の概要説明、デモが行われました。AWSへの移行はモダナイゼーションの始まりに過ぎず、Amazon Qを利用することで少ない労力、リスクでモダナイゼーションを加速できるという話から始まり、本機能追加は移行で課題になる「複雑性」、「専門家の必要性」、「イノベーションの停滞」の改善が製品開発の思考に直接反映されていると説明がありました。機能としては①Inventory Discovery、②Wave Planning、③Network Conversion、④Migrationの4つに大別されます。特に、②Wave Planningが、熟練者でも2週間かかっていた計画作業を15分に、③Network Conversionが、2週間かかっていた作業を1時間以内に短縮してしまうという説明には、かなりの期待感を持ちました。
基調講演や個別セッション以外にも、各企業の展示ブースが並ぶEXPOや、AWSについて学びながら楽しめるAWS BuilderCardsの体験コーナー、パートナー企業主催のパーティなど、情報収集や体験、交流ができる数多くの場がありました。BuilderCardsの体験では、ゲームを通してAWSのアーキテクチャについて学ぶことができ、また、社外の参加者の方やAWSの社員の方とも交流することができ、有意義な時間を過ごせました。体験後は、BuilderCardsを提供してもらうことができたため、社内の教育でも利用していきたいと思いました。
今回はイベントレポートとして、AWS re:Invent2024の開催概要やセッションの内容、現地での経験について共有しました。現地の雰囲気を感じていただければ嬉しいです。また、KeynoteやBreakout Sessionの内容はYouTubeでも配信されていますので、興味のある方はそちらも見てみてください!