メールアーカイブとは?基本や導入メリットについて解説

2025.06.17
デジタルワークプレース 基礎 情報漏洩 ガバナンス
メールアーカイブとは?基本や導入メリットについて解説

Eメールは、いまやビジネスにおけるコミュニケーション手段として一般的となり、その重要性は言うまでもありません。しかし、それに伴う課題も多岐にわたります。情報漏洩やフィッシングメール、ランサムウェアといったサイバーセキュリティの脅威、内部犯行や過失による情報漏洩やメールの誤送信、さらにはハラスメントなどの社内エンゲージメントに関する問題がその一例です。このような課題に対応し、企業の内部統制を強化するために欠かせない存在が「メールアーカイブ」です。
この記事では、メールアーカイブの概要や必要性、導入のメリットと併せて、メールアーカイブサービスの選び方を解説します。さらに、近年ではメールだけのアーカイブでは不足すると考えられており、メールアーカイブの今後についても触れていきます。

メールアーカイブとは?

そもそも、アーカイブとは文書や記録などを保存し、保管する場所や行為を指す言葉です。そのため、メールアーカイブは「メールを保存する場所・行為」ということ、つまりメールを別のシステムに保管して再利用できるようにすることです。

アーカイブはデータの保全や長期保存を目的として利用され、必要なときに取り出して利用できるように整理・管理されます。企業では、メールをはじめとするさまざまなデータを長期にわたり安全に保管し、必要に応じて検索・活用するための重要な存在です。

データを保護するという観点では「バックアップ」と似ていますが、用途が異なります。バックアップは、システム障害やデータ破損などからの復旧を目的としたデータ復元が主な用途です。一方、アーカイブは長期的なデータ保存と、必要に応じて参照できるようにすることが主な用途となっています。

アーカイブとバックアップの主な違い

横にスクロールできます

項目 アーカイブ バックアップ
目的 データの保全、長期間の保存、参照・検索 データ損失に対する保護、システム復旧
データの性質 使用頻度が低く、過去の記録として保持 現在使用中のデータのコピー
検索 特定の条件で効率的に検索 検索機能は限定的
復旧と復元 復旧・復元できるものではない データを迅速に復元し、業務を再開することが目的

メールアーカイブの必要性

企業では法規制や業界基準に基づき、一定期間メールを保存する義務を負う場合があります。2008年に企業の財務報告に関する内部統制を強化するための法律であるJ-SOX法が施行され、企業はコミュニケーション記録を体系的に管理し、必要に応じて証拠として提供することが求められるようになりました。そのため、適切にメールを保存・管理し、必要なときに検索できる、メールアーカイブツールが必要とされています。

さらに、近年では顧客や取引先、社員間のトラブルが訴訟問題に発展するケースや、転職者による秘密情報の不正持ち出しが増加しています。これらのコミュニケーション手段として、メールが頻繁に使用されています。メールアーカイブはこうした問題に迅速かつ適切に対応するために重要な役割を果たします。
なお、ビジネスにおけるコミュニケーションがメールからビジネスチャットにも広がっているため、メールと同様にビジネスチャットもアーカイブ対象として考慮する必要があると言えるでしょう。

メールアーカイブの導入によるメリット

企業におけるメールアーカイブは、単なるメールの保管場所だけにとどまりません。メールアーカイブを導入することは、企業にさまざまなメリットをもたらします。ここでは、主要なメリットをいくつか解説しますので、一つずつ見ていきましょう。

内部統制強化(ハラスメント・コンプライアンス違反の迅速な調査)

メールアーカイブは従業員のメールを網羅的に保存します。そのため、ハラスメントやコンプライアンス違反などの疑いがある場合に、迅速かつ正確な調査を可能にします。問題発生時の状況把握や証拠収集を効率化し、適切な対応を支援することで、健全な職場環境の維持が実現可能です。また、メールがアーカイブされていることを周知することで、従業員による不正行為の抑止にもつながり、企業の信頼性向上も期待できます。

監査対応の効率化

企業では、会計監査・内部監査・監督省庁の監査など、さまざまな監査に対応する必要があります。メールアーカイブを導入することで、監査に必要なメールデータを迅速に検索して提供することが可能です。そのため、監査にかかる時間とコストの大幅な削減が期待できるでしょう。
また、監査プロセスの透明性と正確性を高め、監査法人や監査担当者との連携を円滑にし、監査対応全体の効率化を実現します。

情報漏洩の追跡(セキュリティガバナンス強化)

メールアーカイブはメールの送受信記録を詳細に保存するため、情報漏洩が発生した場合には、誰がどのようなメールを送信したかを迅速に特定でき、発信源や流出先、漏洩した情報の詳細等を迅速に特定することができます。また、メールがアーカイブされていることを周知することで、故意の情報漏洩を抑止する効果が期待できるでしょう。
もしも、情報漏洩が発生した場合、企業にもたらされる損害は多大なものとなります。情報漏洩による企業イメージの低下や損害賠償リスクを最小限に抑えるためにも、メールアーカイブは重要な役割を担います。

情報の検索性の向上

メールアーカイブは、キーワード検索や期間指定検索など、さまざまな条件でメールを検索できる機能を提供します。必要な情報を迅速に見つけ出すことができ、業務効率を向上させる効果が期待できます。メールアーカイブを活用することで、過去のプロジェクトに関する情報や顧客とのやり取りの履歴など、ビジネスに必要な情報に対して迅速にアクセスすることが可能です。情報の検索性向上は、競争優位性を確立するうえでも重要な要素となります。

メールの改ざん、誤削除時の復元

メールデータを改ざん不可能な状態で保存するため、メールの証拠としての信頼性を高められます。また、誤って削除されたメールや、システム障害等によって消失してしまったメールもアーカイブから復元できるため、データの損失を防ぐことも可能です。
ビジネスにおける証拠保全の重要性が高まるなか、メールアーカイブは企業の法的リスクを軽減する役割も担います。メールアーカイブは事業継続性を確保する観点から見ても、有効な手段となります。

メールアーカイブサービスの選び方

メールアーカイブにはメーラーの機能として利用できるものと、アーカイブ専用のサービスが存在します。企業がメールアーカイブを利用する際は、アーカイブ対象のデータ・ツールが豊富で検索機能に優れたアーカイブ専用のサービスの利用を検討しましょう。自社に最適なサービスを選ぶためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、選び方について重要視すべきポイントを解説していきます。

導入形態の選択

導入形態は大きく「オンプレミス型」と「クラウド型」に分けられます。オンプレミス型は自社のサーバーにメールアーカイブのソフトウェアなどをインストールして、メールアーカイブ専用のサーバーを構築する方法です。一方、クラウド型はクラウド上で提供されているメールアーカイブサービスを利用する形態となります。

オンプレミス型は自社の要件に合わせてカスタマイズしやすい反面、導入費用や運用管理の負担が大きくなりやすくなります。クラウド型は初期費用を抑えて手軽に導入できますが、カスタマイズ性はオンプレミスに比べると低く、ランニングコストが発生する点がデメリットです。

両者の違いを理解したうえで、自社の用途・要件に合わせて選択しましょう。

必要な機能の確認

メールアーカイブサービスごとに提供される機能は異なります。そのため、自社に必要な機能を洗い出し、それらの機能が提供されているかを確認することが重要です。例えば、アクセス権限の設定、検索・閲覧履歴の保存、アーカイブデータの削除・改ざん防止、ログ情報のレポート、データの暗号化などの機能が挙げられます。

アーカイブ対象のデータの確認

メールアーカイブはメールの本文だけでなく、添付ファイルやヘッダー情報なども含めたさまざまなデータをアーカイブできるものも存在します。多くのデータを保存するほど必要な容量も変わってくるため、どこまでのデータの保存が必要か、またサービスごとにどこまでのデータの保存が可能か、といった点は必ずチェックしておきましょう。

ビジネスチャットの対応確認

近年ではメールだけでなく、Microsoft TeamsやSlackなどのビジネスチャットツールによるコミュニケーションも一般的となってきています。そのため、メールだけでなくチャットツールのデータもアーカイブ可能か、といったアーカイブの種類の確認も重要です。

検索機能の確認

メールアーカイブサービスを選ぶ際のポイントとして、検索機能は最も重要な要素の一つです。特に、検索精度と検索速度について確認しましょう。

検索精度に関しては、日本語特有の課題に対応できるかどうかがポイントです。日本語は全角・半角の文字や新旧字体が混在しているほか、単語の境界が曖昧といった課題があり、これらの課題に対応できる製品を選ぶ必要があります。一部の製品では、日本語検索の精度が低い場合があるため、導入前にトライアルなどで十分に検証することをおすすめします。

また、検索速度も重要です。データ量が増えるほど検索に時間がかかる傾向がありますが、迅速な情報検索は業務効率に直結します。そのため、大量のデータでも高速に検索できる製品を選ぶことが重要です。

その他にも、キーワード検索、期間指定、送信者・受信者指定などの多様な検索条件に対応しているか、検索結果の表示方法やエクスポート機能なども確認しましょう。メールアーカイブは、保存すること以上に必要なときにすぐに情報を取り出せることが重要です。検索機能が充実していれば、必要な情報を素早く正確に取り出すことができます。

統合アーカイブ製品

メールアーカイブは単なるメールの保管場所としてだけでなく、業務効率化、情報漏洩対策、コンプライアンス対応など、さまざまな目的で必要性が高まっています。企業において、メールアーカイブはなくてはならない存在と言えるでしょう。

DXの流れにより、社外とのコミュニケーションにもビジネスチャットが使われつつある昨今、Eメールだけでなくさまざまなデータソースのアーカイブを一元的に管理できる製品の導入が理想的です。

ZLテクノロジーズ社の統合アーカイブ製品は、Eメールやビジネスチャット、コラボレーションデータなど企業活動のなかで生成されたすべてのデータをアーカイブできる統合アーカイブソリューションです。多種多様なデータソースの統合管理を実現し、優れた検索性で従来のアーカイブ製品よりも短時間での検索を可能とします。

クラウド型のコラボレーションサービスとも親和性の高いアーカイブソリューションですので、アーカイブにお悩みの際はぜひ一度お問い合わせください。

日鉄ソリューションズは統合アーカイブeの設計・構築・移行を支援しています。

Salesforce、Sales Cloud、及びその他はSalesforce.com, Inc.の商標であり、許可のもとで使用しています

関連ページ

おすすめブログ

Azure Virtual Desktop(AVD)とは?Windows 365との違いやメリットを解説
Azure Virtual Desktop(AVD)とは?Windows 365との違いやメリットを解説
クラウド技術の進化にともない、企業のIT環境も大きく変化しています。なかでも、仮想デスクトップ環境を手軽に構築できる「Azure Virtual Desktop(AVD)」が注目されています。この記事では、AVDについて知りたい方に向けて、AVDの基本知識や利用シーン、AVDの特長や導入するメリットと併せて、Windows 365との違いについて解説していきます。