仮想デスクトップには効果があると言われつつも、非常に高価で高嶺の花だったフラッシュストレージですが、最近はSSDの単価が下がり、様々な技術が進んだことで手の届く製品になってきました。本コラムでは、そんなフラッシュストレージと仮想デスクトップ環境との相性の良さについて解説します。
フラッシュストレージと言った場合、SSDとHDDを組み合わせたハイブリッド・フラッシュストレージと、SSDのみで構成されたオール・フラッシュストレージの2つを指すことがあります。また、SSDではなくフラッシュ・モジュール(フラッシュ・メモリ)を利用した製品もありますが、今回はSSDで構成されたオール・フラッシュストレージに焦点を当てて解説します。
表1:フラッシュストレージの分類
※ 2016年03月時点での情報です。すべての分類に跨る製品もあります。
SSDの特長は大きく分けて【性能】【容量】【集積度】【消費電力】【設計の容易さ】ですが、仮想デスクトップにおいて特に有効なのは【速度】と【容量】です。
表2:フラッシュストレージの特長(HDDストレージとの比較)
※ 重複排除とは同じデータ重複を除外し、データを小さく見せる機能。
仮想デスクトップを運用する上で一番始めに問題になるのは、負荷が集中することで発生するストームと言われる現象です。通常時の業務利用では各ユーザがストレージにかける負荷(IOPS)は大きくないのですが、ストームが発生した際には通常の数倍~数10倍に膨れ上がります。その代表的なストームが「ログオンストーム」で、朝の就業時間に利用者がほぼ一斉にPCログオンすることでアクセスが集中し、仮想デスクトップが遅くなったり、応答がなくなったりすることが起こります。(図1:ログオンストームの原理を参照。)この『ストームにどう備えるか』が、仮想デスクトップ設計のキモの1つです。
図1:ログオンストームの原理
通常利用時だけ考えると、IOPSは数千程度でいいので安価なHDDストレージで構成したくなります。しかし、図1のようなピークに備えることを考えると、ストレージの選択は非常に悩ましくなります。お金はかけられないし、かけたとしてもどこまで豪華にすれば良いのか悩むばかりです。そんな中、フラッシュストレージの採用は解決策になり得るようになりました。数年前までの非常に高価なイメージがあるかもしれませんが、最近になって重複排除や圧縮の技術が進み、高価で容量が小さなSSDストレージをより効率的に使えるようになってきました。また、この重複排除や圧縮の技術は同じデータが多いほど有効に働くため、同じOSデータが大量に存在する仮想デスクトップ環境に非常に有効に働きます。これにより、仮想デスクトップ環境ではSSDの物理容量の10倍以上の論理容量で利用できるようになります。この結果、物理容量単価が数百円/GBと高価なフラッシュストレージも、論理容量単価は数十円/GBとなり、安価なストレージと同等の価格帯と捉えられるようになってきました。更にラック・場所代や電気代も安く済むことから、ランニング費用を含めたトータルコストも下げられるという“おまけ”もついてきます。
これまでお話してきたとおり、フラッシュストレージが仮想デスクトップに向く理由は大きく以下2つです。
① 非常に高い処理性能を持っており、ストームに対する懸念が激減する。
② 重複除外や圧縮の技術の効果が高く、論理容量単価が下がり、高価なHDDストレージに近いコストで購入できる。
ただし、フラッシュストレージの採用は高騰するIOに対する解決策でしかなく、それ以外が起因となるストームには対応できません。そのため、運用全体で考えた時にはまだまだ油断は禁物です。デスクトップ環境は常に変化するものです。油断することなく、環境の変化を意識した運用をしてください。でも、それも大変なので、私としてはM³DaaS@absonneをご利用いただくことをお薦めします!
日鉄ソリューションズ株式会社ITインフラソリューション事業本部ITサービスソリューション事業部ソリューションコンサルティング部 エキスパート木村 直樹