VDIの導入には、大きく分ければ二つの方法がある。
ひとつは、自社でITインフラを構築し、運用する「オンプレミス型」、そしてもうひとつが、ITベンダーがクラウド上に構築したネットワークを用い、運用をITベンダーに任せる「DaaS」の利用だ。
なにかと比較されやすいこの二つだが、今回は「コスト」「セキュリティ」「運用」の三点から、それぞれの特徴を比較していこう。
オンプレミス型は、大規模なインフラの構築が必要になる場合が多く、その規模に見合ったイニシャルコストが発生する。また、運用のために社内に専門知識を持った人材を揃えねばならず、導入を検討する段階から十分な人材がそろっている場合を除き、導入のための準備期間がかかる。
DaaSであれば、インフラはITベンダーが構築しており、運用もITベンダーに任せられるため、人件費も含めたイニシャルコストはかなり抑えられる。
ランニングコストについては、イニシャルコストの少なさを反映させて計算するなら、短期的にはDaaSが有利。ただ、長期に渡ってくると、DaaSの契約内容によってはオンプレミス型のほうが割安になってくるケースもある。
セキュリティ面で単純に比較するものではないが、顧客のセキュリティポリシー次第では、オンプレミス型とDaaSでそれぞれに優劣が生まれる。
例えば、ポリシー上、社外にデータを出せないならオンプレミス型を選ぶべきだろう。DaaSはどんなにセキュリティに優れていても、データを含めてベンダー(すなわち他社)に運用を任せることになるので、自社でインフラを保有して運用するオンプレミス型でなければポリシーを守ることができない。
そうではなく、原則的にデータは出せないが、プライベートクラウドならOKという場合であれば、国内ITベンダーのDaaS、という選択肢になる。
とくに制限なくデータを出せしてもいいなら、パブリッククラウドのDaaSであっても問題はない。
ちなみにDaaSに関しては、実績のあるITベンダーのサービスであればセキュリティ対策も任せることができ、最新のソフトウェアを運用したい場合は柔軟にサービスも展開してくれる。ワンストップでセキュリティサービスを享受するのも面倒がなくていいかもしれない。
オンプレミス型もDaaSも、デスクトップ環境をサーバー側で一元管理できるという意味では同じ。違いは、運用できる範囲にある。
オンプレミス型で構築したシステムなら、各仮想マシンのリソース割り当てからインフラまで、自社ですべてを管理することが可能となる。ユーザーの要望に応じてデスクトップ環境をカスタマイズすることもでき、柔軟に使いこなせるだろう。その一方で、運用の多くを自社で担い、システムの監視やトラブル対応まで幅広く対応していかねばならず、運用面での負荷は高くなる。
一方のDaaSでは、基本的にはITベンダーの提供するサービス内容に合わせて、デスクトップのスペックや機能が決まってくるので、細かなカスタマイズは難しい。その代り、運用のほとんどをITベンダーに任せられるため、オンプレミス型に比べ運用の負荷は大きく下がる。
このような特性から、結論をまとめるなら、セキュリティとカスタマイズのしやすさに関しては、オンプレミス型に軍配が上がりそうだ。自社で完全導入を行える資金やリソースがある企業であれば、オンプレミス型は優れた選択肢の一つになり得る。 しかし、どの程度の仮想化が最適かわからなかったり、小規模から始めたりしたい企業にとっては、DaaSを利用するほうが適している。
どちらが優れているかという視点で選ぶより、自社の目的やポリシーに合った手法を検討することで、よりベターな選択が行えるだろう。