まる見え!パブリッククラウド移行(4):知らないと損?AWS移行を助けてくれる便利ツール【後編】

2025.01.17
マルチクラウド 基礎 AWS クラウド活用
まる見え!パブリッククラウド移行(4):知らないと損?AWS移行を助けてくれる便利ツール【後編】

はじめに

皆さん、こんにちは。五味 なぎさです。パブクラ移行をテーマにしている本シリーズ、前回のブログでは、AWS移行における“Migrate&Modernize(移行&モダナイズ)”ステップで役立つサービス全5種類のうち、AWS Application Migration Service(MGN)、AWS Data Migration Service(DMS)についてご紹介しました。まだ前回のブログを読まれていない方はぜひ、こちらをご覧ください。

さて今回は残る下記(3)~(5)について、各利用シーンやコストなどを解説していきたいと思います。

“Migrate&Modernize(移行&モダナイズ)”ステップで役立つサービス一覧

「サービス名は知っているけど実際に使用したことは無い」という方もいらっしゃると思うので、ぜひ利用イメージを具体化するご参考になればと思います。

AWS Storage Gateway

利用シーン

AWS Storage GatewayはオンプレミスからAWSのストレージサービスを利用するためのサービスです。Storage Gatewayには以下3種類があります。

S3ファイルゲートウェイ
  • クライアントからNFSまたはSMBでファイルゲートウェイをマウント(ローカルキャッシュを利用)することでAmazon S3へのファイル保管が可能になります
  • 主にファイルのバックアップやDR、アーカイブ、移行用途で利用されます
ボリュームゲートウェイ
  • クライアントからiSCSIでブロックストレージとしてマウントすることで、オンプレミスのローカルボリュームのバックアップ(EBSスナップショット)がAWSにより自動的に行われます。EBSスナップショットから、オンプレミスのボリューム、またはEBSボリュームへリストアができます
  • 主にオンプレミスのローカルボリュームのバックアップやDR用途で利用されます
テープゲートウェイ
  • 仮想テープライブラリ(VTL)として動作し、仮想テープをS3に格納します
  • 主に既存のテープバックアップ運用の代替としてアーカイブ用途で利用されます

なお、Amazon FSxファイルゲートウェイは新規利用を停止しています。

上述の通り、移行用途で使われることがあるのはS3ファイルゲートウェイです。オンプレミスからS3へファイルを移行したいケースで、移行ツールの都合上、移行元/先の双方をマウントした状態を作りたい、などの場合に使われます。

  • オンプレミス側からAWSのストレージを利用することを目的としたサービスのため、移行ツールとして挙げてはいますが、移行時の一時利用よりも、恒久的に利用する場合に移行作業でも利用する、といったケースが多い印象です。ハイブリッドクラウドにおいてデータ移行については後述のAWS DataSyncを利用し、移行後S3上のファイルをオンプレミスから利用する際にStorage Gatewayを利用するケースもあります。

環境構成

環境構成の検討ポイントとしては以下があります。

オンプレミス環境とAWS環境の接続方法

インターネット経由、閉域(DirectConnect、Site to Site VPN)経由の双方の構成をとることができます。

ゲートウェイアプライアンスの構成

以下の3種類から選択できます。なお、レイテンシの観点から本番利用する場合はオンプレミス側に配置することが推奨されています。

  • オンプレミス側に仮想アプライアンスとして配置する構成(VMWare ESXi、Microsoft Hyper-V、Linux KVM)
  • オンプレミス側にハードウェアアプライアンスとして配置する構成
  • AWS側にEC2として配置する構成

以下はS3ファイルゲートウェイをDirectConnectで接続し、オンプレミス側にゲートウェイアプライアンスを配置する場合の構成例です。

コスト

ゲートウェイの種類によってコストは異なりますが、基本的にはストレージ料金とリクエスト料金が発生します。

例:S3ファイルゲートウェイの場合、ストレージ料金はAmazon S3の利用料金として課金され、Storage GatewayからS3への書き込みに0.01USD/GBが発生します(2024年11月現在)。

詳細は以下の価格表をご参照ください。

AWS DataSync

利用シーン

AWS DataSyncは、オンプレミスとAWS間、またはAWSストレージサービス間でデータを迅速かつ安全に移行するためのフルマネージドサービスです。移行の際に、「大量のファイルデータをオンプレミス/他クラウドからAWSに高速かつセキュアに転送したい」、「オンプレミス/他クラウドの最新データを移行先のAWS環境に同期したい」といった要件はよく上がり、AWS DataSyncはそのような場面で役立ちます。

データ転送の機能に優れており、高速にデータを転送するための仕組み(マルチセッション、圧縮、ロードバランス)や、セキュリティ対策(伝送路暗号化、保存データ暗号化など)、自動再送などの機能が搭載されています。

送信元、宛先として様々なバリエーションに対応しており、オンプレミス環境だけでなく、他クラウドを送信元/宛先とした転送にも対応しています。

環境構成

AWS Storage Gateway同様、オンプレミス環境とAWS環境の接続方法は事前に決定し、必要な接続を確立しておく必要があります。
また、AWS DataSync Agentという仮想アプライアンス(VMWare ESXi、Microsoft Hyper-V、Linux KVM)がオンプレミス側に必要になるため、こちらも準備が必要です。

下図はオンプレミス環境とAWS環境を閉域接続した場合の環境構成例です。図上省略されていますが、「NFS、SMB、object storage」および「DataSync Agent」をオンプレミス側に配置し、オンプレミス環境とAWS環境はDirectConnectやSite to Site VPNで接続しています。

引用:AWS DataSyncネットワーク要件 - AWS DataSync

コスト

ベーシックモードと拡張モードがありますが、拡張モードはAmazon S3ロケーション間の転送でのみ利用可能です。ベーシックモードでは転送されたデータ量により料金が決まります(0.0125USD/GB)(2024年11月現在)。

詳細は以下の価格表をご参照ください。

AWS Snow Family

利用シーン

AWS Storage GatewayやAWS Datasyncはオンプレミス環境とAWS環境がネットワーク接続できることを前提としていましたが、データ容量や回線の制約、セキュリティ上の都合などからネットワーク経由の移行が行えない場合に利用するのがAWS Snow Familyです。AWS Snowmobile、AWS Snowconeがサービス終了となったため、現在利用できるのはAWS Snowballのみです。Snowballは専用の物理デバイスを利用し、オフラインでAWS環境にファイルを移行します。

Snowballには用途に応じてSnowball Edge Storage Optimized とSnowball Edge Compute Optimized の2つのデバイスタイプがありますが、データ移行用途ではSnowball Edge Storage Optimizedを利用します。

利用の流れ

Snowballを利用する際の流れは以下の通りです。

引用:202208_AWS_Black_Belt_AWS_Snowball_Edge_Storage_Optimized.pdf

デバイスの割り当て過程でデバイスを受領し、オンプレミスのネットワークに接続の上データをデバイスに書き込みます。その後デバイスを返送し、AWS環境側への到着後、S3へのImportが行われます。

コスト

Snowball Edge Storage Optimizedには80TBと210TBの2つのタイプがあります。リージョンによって利用料金が異なりますが、東京リージョンですとそれぞれ300USD、3,200USDです(2024年11月現在)。

詳細は以下の価格表をご参照ください。

おわりに

いかがでしたでしょうか?今回は「Migrate&Modernize(移行&モダナイズ)ステップ」で活用できるツールのうち、AWS Storage Gateway、AWS DataSync、AWS Snow Familyについて解説してきました。

対象のデータの種類(VM Image、DBデータ、ファイル等)や要件(オンプレミスとAWSの接続性など)によって利用できるツールが変わってきますし、ツールによって準備する環境も異なりますので、実際の移行の際は前回記事や、本記事を参考に適切な移行方法をご検討いただければと思います。

なお、当社ではAWS包括的技術支援サービスを提供しています。AWSへの移行でお悩み等ございましたら、ぜひ本サービスもご活用ください。その他、AWSをはじめマルチクラウド化に関するご相談全般はこちらからお気軽にお声がけください!

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