Windows Virtual Desktopの導入で"フィット&ギャップ"が最も重要な理由

Windows Virtual Desktopの導入で

テレワークの必要性が叫ばれ、それに伴い無数の実現手段が登場した。IT担当者は結局何を選べばいいのか。これからのIT担当者は費用や機能だけではなく、どのようなサポートサービスが存在するかも押さえる必要がある。

働き方改革は、全ての企業にとって大きな課題の一つである。目標や手法はさまざまだが、生産性やモチベーションの大幅な向上が期待できる取り組みとしてテレワークの導入が注目されている。自宅でもオフィスと同様に業務を遂行できる環境を整備することで、昨今の自然災害や流行病などの影響で通勤が困難になったときのBCP(事業継続計画)として活用できるメリットもある。

テレワーク環境を用意する技術や手法は幾つかあるが、安全性を考慮してオンプレミスに構築したいということであれば「VDI」(仮想デスクトップインフラ)が有効だろう。大きな投資が難しい企業や一部門からスモールスタートしたいという要件であれば、初期投資が小さくて済む「DaaS」(Desktop as a Service)という選択肢もある。

一口にDaaSと言っても選択肢は無数にある。最近ではMicrosoft製品との親和性が高く、Windows 10に最適といわれる「Windows Virtual Desktop」(WVD)が登場し、注目している企業は少なくない。

ただし一般ユーザーも管理者も“快適に”利用したいのであれば、他のシステムとの親和性が重要となる「導入、構築フェーズ」はもちろん、日々の運用も考慮したサポートサービスが気になるところだ。そこで本稿では、サポートを含めてテレワーク環境構築の助けとなるサービスを紹介する。

「PCを持ち帰るだけ」では実現しないテレワーク

働き方改革や自然災害、感染症の流行に対するBCPとして、企業の間でテレワークを推進する動きが広がっている。問題は、いかに従業員の業務環境を維持したまま、テレワークのメリットを引き出すかにある。ただ業務PCを持ち帰るだけではまともに仕事ができないからだ。

多くのオフィスワーカーは、「Microsoft Office」に代表されるオフィスツールをメインの業務ツールとして利用しているだろう。「Microsoft Office 365」(以下、Office 365)は社外からでも簡単に利用できるため、テレワークの実現に有効であるように見える。

しかし、社外からのOffice 365へのアクセスを有効にしただけで、業務環境が全てまかなえるわけではない。なぜなら、大抵の企業には社外からのアクセスを有効にできない社内システムがあるからだ。

従来はVPN(Virtual Private Network)を利用して「暗号化された経路で社外から社内ネットワークに接続する」手法が採られてきた。しかしVPNのコストは大きくなりがちで、運用にも手間が掛かるという問題がある。通信が安全だとしても「自社の重要データが入ったPCが外部に出る」ことのリスクを考慮しなければならない。

「本格的なテレワークを始めれば、数多くのPCが重要データとともに社外に出ていく。社内での利用に比べて情報漏えいのリスクは高くなり、PCが管理者の目の届かないところに行くことで『Windows 10の定期的なアップデート』などの運用がおろそかになる可能性も高い。利用ポリシーの順守など統制が利きにくくなり、安全性が大幅に低下してしまう恐れがある」と、日鉄ソリューションズの取屋朝子氏(ITインフラソリューション事業本部 営業本部 デジタルプラットフォーム営業部 コミュニケーションプラットフォーム営業グループ)は指摘する。

高価で高度なVDIを手軽なクラウドサービスで

こうした問題を解決する手法として有効なのがVDIだ。仮想化基盤に構築した仮想マシンを利用するため、オフィスでも自宅でも同じデスクトップ環境を利用できる。統合された環境のため管理が容易で、OSのアップデートもスムーズに実行できるメリットは大きい。社内システムに近い場所に設置できるため、業務アプリケーションのパフォーマンスが向上するケースもある。

とはいえ、一般的なオンプレミスシステムとして構成するVDIは、ハードウェアコストが大きくなるという問題がある。デスクトップ環境のパフォーマンスを維持するためには、初期のサイジングはもちろん、計画的な増強も欠かせない。運用も高度になりがちで、管理者の負担も大きい。巨額の投資になるため導入のハードルが高く、一部門からスモールスタートで試したいというニーズにも向かない。

「こうした課題を解決するのがVDIをサービスとして提供するDaaSだ。クラウドサービスなので、インフラのサイジングや調達が簡単だ。運用もサービスプロバイダーに任せられるメリットがある。一般的にはユーザー単位の課金体系なのでスモールスタートも可能で、利用をやめるのも簡単だ」(取屋氏)

無数にあるDaaSの中でWVDに注目する理由

DaaSは「小規模で始めたい」「運用負荷を抑えたい」というニーズに向いているが、多様なサービスがあり「選定が難しい」という声もある。そこで選択肢として挙がるのが、Windows 10に最適なDaaS「Windows Virtual Desktop」(WVD)だ。

WVDが他のDaaSと決定的に異なるのは「マルチセッションに対応したWindows 10イメージを利用できる」点にある。WVDには、「Windows 10 Enterprise マルチセッション」というイメージが用意されており、これを利用すると1台の仮想マシンに複数のユーザーを収容できる。アプリケーション互換性を維持したまま、従来のSBC(サーバベースコンピューティング)方式のシンクライアントのような収容性が得られるというわけだ。従来であれば複数必要だった仮想マシンをまとめられるため、コスト削減も見込める。

「Microsoft Azure」(以下、Azure)を使ったサービスのため、Microsoftの各種サービスとの親和性が高く、特にOffice 365は「パフォーマンスが劣化せず快適に利用できる」といわれている。業務システムのクラウド化を推進している企業もあるが、そうした企業は業務システムをAzureに展開すれば、WVDとの距離が近くなるためパフォーマンスを維持できる可能性が高い。安定性も高く評価されており、信頼性の高い業務環境を従業員に提供できるだろう。

WVD構成イメージ

WVD構成イメージ

とはいえ、WVDが「あらゆる場面で完璧なサービス」として機能するわけではない。日鉄ソリューションズの木村直樹氏(ITインフラソリューション事業本部 デジタルプラットフォーム事業部 M³DaaS推進部 第四グループリーダー)は次のように指摘する。

「WVDは、高度な管理機能が不足しており、ただサービスを利用するだけではニーズを満たせない可能性がある」

例えば、VMwareやCitrix Systemsなどの著名なVDI製品には、「リンククローン」「Machine Creation Services」といったマスターOSからの展開を容易にする機能が搭載されているが、WVDにはシンプルな管理機能しかなく、OSのアップデート運用が煩雑になる恐れがある。

「VMwareやCitrix SystemsのVDIには『Microsoft Teams』などのビデオ会議や電話会議などの通信を最適化する機能が搭載されているが、2020年3月時点ではWVDにその機能はない。WVDを最大限に活用するためには、自社のニーズに最適化するための“フィット&ギャップ”のプロセスが欠かせない。場合によっては、高度な機能を備えた『Citrix Cloud』や『VMware Horizon Cloud on Microsoft Azure』などと組み合わせて、最適な運用手法を確立する必要もある。リソースの状況を的確に把握して分析することも必要で、導入から運用までスムーズに進めるためにはノウハウを持ったプロフェッショナルのサポートが重要だ」(木村氏)

プロの知見と経験でWVDを自社にフィットさせる

日鉄ソリューションズは、オンプレミスシステムの構築や自社クラウドサービス、運用サポートまで含めたさまざまなVDIを「M³DaaS」シリーズとして展開する。このシリーズにはWVD用のサービス「M³DaaS for Windows Virtual Desktop with Horizon Cloud/Citrix Cloud」が含まれており、WVD環境の構築から運用まで一元的なサービスとして利用できる。

「M³DaaS for Windows Virtual Desktop PoC/構築支援メニュー」は、WVDの検証をサポートするサービスだ。検証環境の構築や既存環境とのネットワーク連携、検証計画作成支援、検証結果報告書作成支援など、検討に必要な項目をフルスタックでサポートする。

M³DaaS for Windows Virtual Desktop PoC/構築支援メニュー

M³DaaS for Windows Virtual Desktop PoC/構築支援メニュー

「DaaSやVDIのPoC(概念実証)をしてみたものの、『実環境との違いが大きく、運用のイメージが分からない』と悩む担当者も少なくない。日鉄ソリューションズのノウハウを生かした構築支援メニューならば検証すべき項目を網羅でき、しっかりと導入の効果や運用の注意点を把握できる」(木村氏)

運用支援については明確なメニュー体系を間もなく公開する予定だという。

「業務はデスクトップ環境だけでは完結しない。サーバなどの業務システムをAzureなどに載せ替え、クラウド化を推進したいというニーズがあるだろう。それだけでなく、クラウド環境におけるネットワークの最適化やBCPの強化をしたいはずだ。日鉄ソリューションズは幅広いITサービスを提供しており、クラウド活用を含めてトータルでサポートする」(取屋氏)

転載元:TechTarget
TechTarget 2020年3月31日掲載記事より転載
本記事はTechTargetより許諾を得て掲載しています。